泡があってもシャンパンというわけじゃない
 〜スパークリングワイン〜


 シュワーっと泡の出るワインは、さわやかな感じがしてなかなか楽しめるものですが、こうした炭酸の入ったワインのことを「シャンパン」だと思っている方は多いようです。
 泡が出るからといってもシャンパンというわけではありませんよ。炭酸の入ったワイン、つまり発泡性ワインのことを、フランスではヴァン・ムスー、ドイツではゼクト、イタリアではスプマンテ、スペインではエスプモーソ、アメリカではスパークリングワインなどと呼んでいます。

シャンパンとヴァン・ムスー(フランス)

 シャンパンという発泡性ワインはフランスのシャンパーニュ地方で作られたものだけです。それ以外の地方で作られたものはヴァン・ムスーと呼ばれています。シャンパンで特に有名なものにドン・ペリニョンがありますが、これは17世紀後半の実在の人物の名でもあり、一説によるとこのドン・ペリニョンによって発泡性ワインが作り出されたとされています。
 シャンパーニュでの代表的な製法ですが、ブドウを収穫して発酵(1次発酵)させた原酒をブレンドし、糖分と酵母を加えて瓶詰めして、また発酵(2次発酵)させます。そして、15ヶ月から数年間瓶熟成させます。このときに独特の気泡が生まれますが、澱もたまりますので動瓶(ルミュアージュ)という作業をして澱を徐々に瓶口に集め、それを口抜き(デゴルジュマン)という作業で取り除きます。このとき目減りしてしまうので、リキュールで補充(ドザージュ)して出来上がります。この一連の作業は大変骨の折れる作業のようで、腱鞘炎になることもあると聞きました。ちなみに、このシャンパーニュでの製法をメトード・シャンプノワーズ(シャンパーニュ方式)といいます。
 ヴァン・ムスーの製法も、シャンパーニュと同様の方式のものや、キュヴェ・クローズ方式(シャルマー方式)といって、2次発酵を瓶ではなく密閉タンクで行う方式などがあります。
 きめ細かくなめらかな泡立ちのシャンパンは、やっぱり上等なディナーと合わせていただきたいものですね。

ゼクトとシャウムヴァイン(ドイツ)

 ドイツ語では発泡性ワインのことをシャウムヴァインと呼びますが、単にゼクトとも呼ばれています。正式には、高級とされる順に、ドイッチャー・ゼクト・ベーアー、ドイッチャー・ゼクト、クヴァリテーツシャウムヴァイン/ゼクト、シャウムヴァインとなり、最後のシャウムヴァインだけはゼクトとは呼びません。
 ゼクトの製法ですが、シャンパーニュ方式やシャルマー方式がとられます。他に白ワインに炭酸ガスを注入する方式もありますが、これはシャウムヴァイン・ツーゲゼッター・コーレンゾイレと呼ばれ、シャウムヴァインにしか用いられません。
 ドイツの白ワインは甘口が多いのですが、ゼクトでは辛口もたくさん見かけます。冷たく冷やした辛口のゼクトは、暑い夏にはおすすめです。でも、つい飲み過ぎてしまうので注意が必要です。

スプマンテとプロセッコ(イタリア)

 イタリアのスプマンテは、ほとんどがシャルマー方式によって作られています。近年、日本でもよく見かけるようになり、コンビニにも置いてたりします。一昔前では、ちょっと想像のつかない光景ですね。特に、アスティと呼ばれるものは、ピエモンテ州のアスティ郡で作られたもので、甘口のスプマンテです。食後酒に良いかもしれませんね。
 また、スプマンテとは別にプロセッコと呼ばれるものもあり、ヴェネト州と、フリ ウリ・ヴェネツィア・ジュリーリア州でのみで生産される発泡性ワインで、プロセッコ種というブドウだけを用いて作るそうです。
 前出のゼクトと違い、スプマンテは結構あちこちの酒店やレストランでも置くようになったので、気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。

カヴァとエスプモーソ(スペイン)

 スペインでも発泡性ワインは作られており、エスプモーソと呼ばれています。そのほとんどがカタルーニャ地方で作られていますが、土質がシャンパーニュによく似ていて、良質のブドウが生産されています。製法はさまざまですが、特にカヴァと呼ばれるものは、本格的なシャンパーニュ方式によって作られていて、世界的にも大変評価の高く、エスプモーソとははっきりと区別されています。カタルーニャの人々は、ピカソやガウディと並んでそんなカヴァを誇りにしているそうです。
 スペインの発泡性ワインは日本でも少しずつ見かけるようになりましたが、そのほとんどはカヴァです。シャンパンと同じ製法で作られたカヴァで乾杯というのもまた、味わい深いかもしれませんね。